News for 4月 2011

30/04/2011/SAT/百十七日目

朝、宮城で震度3。昼、茨城、福島で震度4。

デモへ行こうと思ったが、先日の交通事故による母の精神的ショックひどいようなので、昼は実家へ赴き、母の話し相手に。

夜は『4.48サイコシス』で共演したセミちゃんが、韓国から日本に来ているというので、セミちゃん、飴屋さんの娘さんのくるみちゃん、私の3人で新大久保で会う。飴屋さんとコロスケさん(飴屋さんの「パ」ートナー)は仕事で不在だったのだが、くるみちゃんが家で遊びたがったため、飴屋さん宅に上がり込んでDVDを鑑賞したり、お料理ごっこしたり。最後は近くの駐車場で季節外れの花火をしてお別れ。

三日連続の完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:542日(±0)
終演まで:422日(-1)
終演見込み日:2012年6月25日(±0)

しかし、更新が一日滞った(6/12)ので、罰則として上演日数一日延長。

積算上演日数:543日
終演まで:423日
終演見込み日:2012年6月26日

Posted: 4月 30th, 2011
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29/04/2011/FRI/百十六日目

未明、茨城、岩手で震度3。朝、新潟で震度3。昼、種子島で震度3。夕方、岩手で震度4。夜、茨城で震度3。

オフ。
トレッキング・シューズを一足購入。

小佐古敏荘内閣官房参与が、小中学校の屋外活動を制限する限界放射線量を年間20ミリシーベルトを基準に決めたことに対して抗議の辞任。「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは学問上の見地からのみならず、私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」と、涙ながらに異論を唱えた。

二日連続の完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:542日(±0)
終演まで:423日(-1)
終演見込み日:2012年6月25日(±0)

Posted: 4月 29th, 2011
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28/04/2011/THU/百十五日目

朝、宮城で震度3。夜、福島で震度4。

芸大へ出勤。

私が勤務しているのは東京芸大とはいっても、上野校地の方ではなく茨城県は取手校地の方である。通勤には常磐自動車道を使うのが常だ。

震災以降、常磐道の交通情報を伝える電光掲示板には、常に「広野ICー常磐富岡IC 災害通行止め」との文字が表示されるようになった。この区間は福島第一原「パ」ツの約10km付近まで、第二原「パ」ツの2~3km付近にまで接近し、警戒区域に入ることになる。この道をまっすぐ行った先はグラウンド・ゼロ…。通勤の道中、この電光掲示板を目にするたびに、ハンドルを握る手に力が入り、溜め息が漏れてくる。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:542日(±0)
終演まで:424日(-1)
終演見込み日:2012年6月25日(±0)

Posted: 4月 28th, 2011
Categories: パ日誌
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27/04/2011/WED/百十四日目

昼、福島で震度3。夜、長野で震度4、福島で震度3。

清澄白河の駅を出て、清澄橋通り通って東京都現代美術館へ向かう。すると後ろ姿に見覚えのある男性が前を歩いているのが見えた。もしやと思い、追いついてみると東京都現代美術館学芸員の吉崎さんだった。

私:「あぁ、やっぱり吉崎さんだ。こんにちは」

地雷ワード、「やっぱり」、パ裂。
今年に入って「やっぱり」と口を滑らせるのは、これで20回目。最多頻「パ」ツ語はこの「やっぱり」だ。

今日は東京都現代美術館で多摩美の学外授業だった。授業では課題として映像を使ったインスタレーションを制作させるのだが、その一例として、常設展示室に展示されている私の『The Voice-over』を学生たちに紹介。作品について現場で解説する。

ここまでの成績…
積算上演日数:542日(+1)
終演まで:425日(±0)
終演見込み日:2012年6月25日(+1)

Posted: 4月 27th, 2011
Categories: パ日誌
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26/04/2011/TUE/百十三日目

朝、宮城、福島で震度3。昼、福島で震度3。夜、茨城で震度4。

芸大の授業初日。
多摩美と同じく、芸大取手校地の授業も震災の影響で遅れて開講。

授業の最初に自己紹介をかねて、ホワイトボードに大きく「パ」の字を書き、自分はこの音節を口にできないのだ、と詫びる。やはりどよめく教室。

しかし今日は調子が悪かった。
授業内で地雷ワード、「パフォーマンス」、「パソコン」、それぞれ一回ずつパ裂。今年になって「パフォーマンス」と口を滑らせたのは4回目。「パソコン」と口を滑らせたのは2回目である。

夜、帰宅してビールを飲みながらデスクワークをしていると、いきなりノートパソコンが故障。頭を抱えているところへ、母親から電話がかかってきた。駅前の横断歩道を歩いていたところ、車にはねられ救急車で病院へ運ばれたというのだ。慌てて車を飛ばして病院へ。飲酒運転したことになるが、事態が事態である。事故直後母は意識を失っていたらしいが、不幸中の幸いで軽いムチウチで済み、その日のうちに退院。

当然、事故の責任は運転者の方にあるわけだが、母は母でかなりぼーっと歩いていたらしい。4月13日に日誌に書いた「パ」ートナーの事故のケースと同じように、度重なる余震への恐れや、水や野菜、海産物などへの不安、国への不信感などによって、震災発生以来、何をするにも気持ちが浮ついた状態が続いていたようだ。それに追い打ちをかけるようにして、4月23日に私があんな問題を起こしたことが、ますます母をおかしくさせてしまったのだろう。

ここまでの成績…
積算上演日数:541日(+2)
終演まで:425日(+1)
終演見込み日:2012年6月24日(+2)

Posted: 4月 26th, 2011
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25/04/2011/MON/百十二日目

未明、熊本で震度3。夕方、茨城で震度4。

昨日「パ」ートナーに言われた言葉を肝に命じてすべて仕切り直し。
今日から私は生まれ直すのだ。

震災の影響で開講が遅れていた多摩美の授業は今日が初日。
はじめて顔を合わせる学生たちに、まず『「パ」日誌メント』について説明し、私が授業内で一切「パ」という音節を口にできないことを詫びる。
どよめく教室…。

仕事を終えた帰り道、車で多摩境通りを通ると、3月11日の日誌にも少し書いた「COSTOCO多摩境店」は閉店していた。2名の方が下敷きになって亡くなった駐車場のスロープも、あの日に倒壊した状態のままだった。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:539日(±0)
終演まで:424日(-1)
終演見込み日:2012年6月22日(±0)

Posted: 4月 25th, 2011
Categories: パ日誌
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24/04/2011/SUN/百十一日目

目が覚めると実家のベッドの上にいた。
どうやってここへ来たのかよく覚えていない。
手には切り傷。顔には打撲の跡。いつどこで怪我をしたのだろう。
しかし、自分が昨日取り返しのつかないことをしてしまったことだけは覚えていた。

蓄積された地球のプレートの歪みが限界に達して大地震が起こるように、3月11日以来私の中で少しずつ蓄積されてきた歪みがとうとう限界に達し、最悪の形で「パ」裂した。1月5日の日誌にも書いた、今までステージの上でしか露にしてこなかった破壊のエネルギーが行き場をなくし、日常生活の中で自分に向かった結果、「パ」ートナーを巻き添えにして恐怖のどん底に陥れた上、怪我まで負わせてしまったのだ。空気に絶望し、水に絶望し、土に絶望し、雨に絶望し、海に絶望し、国に絶望し、世間に絶望し、芸術にまで絶望していく中で、私に残された唯一の希望は「パ」ートナーとの未来だったというのに、それすら私は壊してしまったのだ。

五言絶句「勸酒」の井伏鱒二による有名な訳、「さよならだけが人生だ」という言葉に対して、寺山修司は「さよならだけが人生ならば、また来る春はなんだろう」と、希望の言葉で強烈なカウンターパンチを食らわせたが(寺山はボクシングファンだった)、私にとって「パ」ートナーの存在は、まさに寺山の言うこの「春」そのものだった。「パ」ートナーと出会う前の私はまるで灰色の燃えかすのようで、すっかり人生を生き尽くした気になっていた。そんな私に希望のカウンターパンチを喰らわせ、もう一度人生を生き直すことに本気にさせたのは他ならぬ彼女だった。

しかし今やすべてが終わったと思った。
途方に暮れているうちに、夕方になった。
ふいに電話が鳴る。

「パ」ートナーだった。

私は自分のしたことを詫びる以外、何も言うことができなかった。お互い無言の状態が続く。
どれくらい無言の状態が続いただろうか。「パ」ートナーがこう切り出した。

「あなたに罰を与えます。二子玉川にいるからすぐ来て。」

言われるがままに車で駆けつける。「パ」ートナーは憔悴しきった私を少し睨んで溜め息をつくと、ジュエリーショップへ連れて行くようにといった。

店にいくと、ガラスケースの中でずっと私たちを待っていたかのようにそれはあった。
七つの黒ダイヤで構成された十字架のネックレス。
「パ」ートナーは私にそれを買わせた。
その場で首にかけてやると、とてもよく似合った。

二人で店を出て歩き出す。すると「パ」ートナーは急に立ち止まって、私にこう言ったのだった。

「あなたは自分がとても強いエネルギーを持っていることをちゃんと知りなさい。そしてそのエネルギーが人々に大きな影響を与えてしまうことも自覚しなさい。エネルギーにはそもそも善も悪もありません。その現れ方が問題なのです。だから絶対に自分のエネルギーを悪い形で表さないこと。その強いエネルギーを善い形で表すのがあなたに与えられた仕事です。このことを約束できるなら昨日のことは許します。私はこのネックレスを今日から死ぬまでずっと首にかけ続けます。この黒ダイヤの十字架が、私との約束を破らないか、いつもあなたを見ています。」

「罰」とはこのことだったのか。
かくして私は黒ダイヤの十字架に、ずっと監視されることとなった。

福島で震度4。茨城で震度3。

今日は完封。

しかし、更新が一日滞ったため(6/8)、罰則として上演期間一日延長。

ここまでの成績…
積算上演日数:539日(+1)
終演まで:425日(±0)
終演見込み日:2012年6月22日(+1)

Posted: 4月 24th, 2011
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23/04/2011/SAT/百十日目

ついに私は壊れた。

自らの崩壊に「パ」ートナーを巻き込んで怪我をさせてしまった。

裸足で家を飛び出して、放射能の雨の中を彷徨う。

国道246号線。
走り去るトラックの怒号。
絶望的に黒い路面。

永遠に自分をこの世界から消そうと思った。
が、消せなかった。

そのまま家に帰らず。
その後のことはあまり覚えていない。

「パ」裂があったのか、なかったのかも、わからない。

精神崩壊による責任能力喪失のため、完封ということに。

ここまでの成績…
積算上演日数:538日(±0)
終演まで:425日(-1)
終演見込み日:2012年6月21日(±0)

Posted: 4月 23rd, 2011
Categories: パ日誌
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22/04/2011/FRI/百九日目

朝、千葉で震度3。昼、福島で震度4、千葉で震度3、熊本で震度3。深夜、福島で震度5弱。

昨日の日誌で書いた、柏と守谷の女性の母乳から放射性ヨウ素が検出された問題について、東京副都知事がtwitterでツイートした発言が物議をかもしている。

・・・・・・

感情でなく数値で判断してください。東京の数値は公表されている通り現在まったく安全です。 RT @keafairy @inosenaoki あす午後三時に、厚生労働省で会見「茨城県内で複数の母乳からヨウ素131が検出http://t.co/3KdsGE2 東京も検出は時間の問題
inosenaoki 2011/04/21 03:15:39

数値を示しながら発言してください。気分で言う意味はまったくありません。このツイッターでも金町浄水場の数値、新宿のセンターの蛇口の数値(いずれも都庁HP)にあります。言語技術の基本です。数値以外の議論は無駄です。
inosenaoki 2011/04/21 03:32:25

数値を示してもわからなければ゛わかる気がないということです。客観性という指標を否定したら、いま何時何分かも考えないで生きているということですから。別の個人的な不安を持ち込むのはやめたほうがよいです。
inosenaoki 2011/04/21 03:42:22

仕事をしない専業主婦は、パートでもなんでも仕事をして社会人になってください。数値の意味がわかるようになるしかありませんから。不確かな気分で子どもを不安にさせてはいけません。
inosenaoki 2011/04/21 03:48:28

数値を公表をしてもわからない人は「不定愁訴」です。ジョギングで気分でも変えください。行政の分野ではありません。
inosenaoki 2011/04/21 04:00:46

不安だ、不安だと東京でぶつぶつ言う人にかぎって東北へボランティアに行かない。現地を見てきたらよい。想像力が足りないんだろうね。
inosenaoki 2011/04/21 04:28:17

利己しかなく利他がみえない視野の狭い人には何を言っても無駄だね。
inosenaoki 2011/04/21 04:37:23

・・・・・・・

今のこの状況で、乳幼児を持つ母親が昨日のニュースを知って不安や恐れの感情を抱くのは当然だろう。自らの母乳から放射性物質が出ても数値が基準を下回っているから大丈夫、とクールに割り切って赤ん坊に乳を与えられる母親がいたとしたら、そっちの方が狂っていやしないか。私は人としてのごく自然な感情を蔑むような、この一連の発言に対して怒りの気持ちを禁じ得なかった。

この件について、「パ」ートナーに愚痴をこぼす…。

「…それがさ、怠け者はパートでもやれ、みたいなさ、酷い言い草なんだよ。誰に向かって言ってるか分かんないんだけど、パッと見、赤ちゃんがいる母親たちに言ってるみたいに見えてさ。ちょっとそれはないだろって。あんな人の気持ちを想像する想像力がない人間が副都知事をやってるなんて…」

地雷ワード「パート」、「パッと」、パ裂。

ここまでの成績…
積算上演日数:538日(+2)
終演まで:426日(+1)
終演見込み日:2012年6月21日(+2)

Posted: 4月 22nd, 2011
Categories: パ日誌
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21/04/2011/THU/百八日目

未明、宮城で震度3。早朝、福島、秋田で震度3。夕方、宮城で震度4。夜、千葉で震度5弱。

千葉県柏市の産後8ヶ月の女性の母乳から36.6ベクレル、茨城県守谷市の女性の母乳から31.8ベクレルの放射性ヨウ素が検出された。

巷では「ひとつになろう日本」といったスローガンが叫ばれている。しかしわざわざそんなスローガンを叫ばずとも、既に私たちは一つなのだという厳然たる事実を、このニュースを通して思い知らされずにはいられない。

今まで私は福島の原「パ」ツから送られてくる電気を使って生活してきた。つまりそれは自宅のコンセントが、東北は福島にまで物理的に繋がっているということを示している。そして今回、福島の原「パ」ツがドカンと吹っ飛んで、今度はその中に詰まっていた物が、遥か遠く関東に住んでいる母親の乳から流れ出た。

言うまでもなく母乳とは血液が変化したものだ。母乳から放射性物質が出たということは、つまりこの女性たちの血管の中に、福島の原「パ」ツの中に詰まっていた物が流れているということだ。柏や守谷周辺は私の勤務地である。自宅からもさほど遠くはない。つまりこれは私の血管の中にも、かなりの可能性で福島の原「パ」ツの中に詰まっていた物が流れているということを示している。

汚染された母乳が突きつけてくる。泣いても笑っても既に私たちは「ひとつ」なのだ、と。好むと好まざるとに関わらず、既に私たちは「ひとつ」なのだ、と。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:536日(±0)
終演まで:425日(-1)
終演見込み日:2012年6月19日(±0)

Posted: 4月 21st, 2011
Categories: パ日誌
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20/04/2011/WED/百七日目

秋田、茨城、福島、新潟で震度3。

ラーメンを食べながら、「パ」ートナーに何故私がチャリティー展「Art for Tommorrow」を辞退したか、その理由を説明していた。話した内容は大体4月9日の日誌に書いた通りである。

しかし、その際に思わず地雷ワード、「Japan Art Donation」、パ裂。

どうもだめだ。憂鬱な気分。どんどん落ち込んでいき、溜め息ばかり。相変わらず顔の表情筋もずっと引きつったままである。その引きつりをほぐそうと、手で頬をマッサージしてみるが、鈍くていやな感覚が襲ってくるだけで、ますます溜め息が漏れて出てくるのだった。
そんな時、実家の母よりメールが届く。

映画の提案
今、話題の原発ドキュメンタリーです。
「十万年後の安全」
フィンランドの映画です。 渋谷アップリンクで上映中。
連日満員。皆で見に行きませんか?
忙しいですか?
インターネットで検索してみてください。
私は生きている間中原発反対をします。
デモにも参加しようと思います。(暴れ回るデモは嫌ですが。)
君達次の世代に安全な地球を渡すことが去り行く者の努めであり義務だとかんがえるからです。
その為にも、もっともっと原発の事をしらねばなりません。
君達も君達の子供達に安全な地球を渡して欲しいと思います。

ここまでの成績…
積算上演日数:536日(+1)
終演まで:426日(±0)
終演見込み日:2012年6月19日(+1)

Posted: 4月 20th, 2011
Categories: パ日誌
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19/04/2011/TUE/契約者様へ(陳謝)


長らく更新が滞っていた「パ」日誌ですが、「パ」を購入いただいた契約者様よりクレームをいただきました。契約者様へ宛てた私の陳謝状を、ご本人様の承諾を得た上でここに公開させていただきます。それに伴いまして、本日4月19日より「パ」日誌の更新を再開させていただきます。以下文中にありますように、更新は震災前の日々と、震災後の日々が、丁度同じ日付でパラレルに進行する形で行います。さらなる詳細は以下の陳謝にてご確認ください。尚、文中の私からの提案は、契約者様によってすべて了承済みであることをご報告しておきます。今後とも『「パ」日誌メント』をよろしくお願い申し上げます。


○○○○様

まず最初にブログの更新が遅れておりますことを深くお詫び申し上げます。
また、アートを信じる一個人として、厳しくも真摯なご意見下さったことに感謝いたします。
いただいたメールを拝読し、貴殿のような方によって『「パ」日誌メント』が購入されたことを幸福に思いました。

今回のことについて以下に陳謝いたしますとともに、これを機会に私が『「パ」日誌メント』についての考えていることをご説明させていただきます。

まず、『「パ」日誌メント』においては、私が「パ」と発音してしまった瞬間、あるいは逆に「パ」と発音していないすべての瞬間こそが「ライブ」パフォーマンスであると考えています。

貴殿に「パ」という音節を販売したことによって、それを発音できなくなる不自由な状態を24時間365日続けることが「ライブ・パフォーマンス」である、というのがこの作品のコンセプトであると同時に、誓約書における第1、第2の誓約(クリックで表示)ですが、まず私はこれに関しては違反していないことを申し上げさせていただきます。

しかし私がいくら24時間365日、ライブパフォーマンス状態を続けていると主張しても、そのことが何らかの具体的な形で貴殿に示されなければ、観測できない猫の生死を問うようなものです。そのために設けられたのが、誓約書における第3の誓約(クリックで表示)であり、今回厳しくご指摘いただいている点です。

「ブログで随時公開報告する」という誓約における「随時」が、”数ヶ月に一度というのはあり得ない”、というご指摘はまったくその通りだと思います。

私はこの第3の誓約に違反していることを認め、深くお詫び申し上げなければなりません。

ここで一つめの提案なのですが、この違反については、更新が停まっている2月9日から数えて次にブログが更新されるまでの日数分、パフォーマンスの上演日を延長加算させていただくことで賠償責任とさせていただけないでしょうか。

私が ”パフォーマンスにおいてはライブの人” であり、更新が滞ることで、その私のパフォーマンスの ”ライブ感の担保が失われた” とのご指摘については、なるほどと思いました。

というのも、私にとってブログの更新はあくまで「随時報告」が目的であり、そのことを ”ライブ感を出すための仕組み” としては考えていなかったからです。

私は「ライブ感」が感じられるためには、以下の二つの条件のうち、いずれかが不可欠だと考えます。

  1. パフォーマンスの行われている瞬間の一回性が体感されること。
  2. 演者の発したものが観客に作用し、その観客の反応がまた演者に作用してパフォーマンスが変容していく、というフィードバック現象が起こること。

上記1の条件に則してブログに「ライブ感」を求めるならば、(これは極論かも知れませんが)書かれた報告は書かれた瞬間に消されなければなりません。

そうした「ライブ感を出す」ためには、ブログよりも、更新された情報が即座に流れていってしまうtwitterの方がずっと効果的だったと言えるでしょう。「パ」と口を滑らせてしまう度に、それをリアルタイムにtwitterで報告する案も考えましたが、私はその方法を選びませんでした。

なぜなら私はブログの執筆においては「ライブ感」よりも、綴られる言葉を未来に残して(遺して)いくことを重視していたからです。それは最終的に一冊の本にするというコンセプトにも現れていますし、これまで書いてきた記事タイトルが、ずらりとトップページに並んで表示されるというブログのデザイン構造にも現れています。

「パ」日誌に綴られた言葉は、現れたら消えずに蓄積され、残って(遺って)いく必要があるのです。その意味で、ブログに綴られていく言葉は、少なくとも私の中では、舞台でのライブパフォーマンスよりも、『The Voice-over』でのカセットテープ群の方につながっています。

おそらく貴殿の仰る「ライブ感」とは、例え上記1の条件を満たさずとも、言葉が少しずつ蓄積されていく過程を、緩やかな時間軸で共有していくことが、読者にとっては「ライブ感」なのだ、ということだろうと思います。そのような「ライブ感」と、「未来へ残す(遺す)こと」をハイブリッドに保つというのが最もスマートなバランスだったのでしょう。

おそらく私は「ライブ感」に対しても、「未来へ残す(遺す)こと」に対しても、理想に偏りすぎていました。じっくりと推敲した言葉を残したいという想いに囚われることで、書き進める速度が落ち、下書きが溜まり、更新が滞っていき、バランスを失っていたのだと思います。

更新頻度について現状では「随時」という曖昧な形での誓約となっており、具体的に設定した上でお約束していなかったことを後悔しています。このこともお詫び申し上げたいと思います。私のつもりでは、日刊紙~週刊誌レベルの頻度で更新したいと考えていました。どんなに滞ることがあっても、月刊誌レベル(一ヶ月)を超えることはあってはならないと思っていました。一週間遅れ…二週間遅れ…そして個人的に絶対に超えまいと思っていた一ヶ月という限度を超えてしまった矢先にあの震災が起きました。以来、ショックでさらに書き進めることができなくなって今に至る、というのが正直なところです。

貴殿をはじめ、読んで下さっていた方々をがっかりさせている自分自身に落胆するばかりですが、ここに来て貴殿の厳しいご意見をいただいたことが、当の私にとって非常に「ライブ感」のある出来事として感じられています。そのことを私は、前述の「ライブ感」の条件の2つ目に書いた、フィードバック現象がここで起こっているのだととらえています。そして貴殿のフィードバックに対する、フィードバックとして、私は今、この文書を書いています。

ここでもう一つ提案させて下さい。
この私の貴殿に宛てた文書をウェブ版「パ」日誌で公開し、それをもって滞っていた更新の仕切り直しとさせていただけないでしょうか。(貴殿の実名は伏せさせていただきます)
更新はまず、2月10日と11日、一ヶ月飛んで3月11日の三日間を更新し、以後、震災前の日々と、震災後の日々が丁度同じ日付で、パラレルに進行していくようにしたいと考えています。また、更新頻度については、オンタイムにキャッチアップするまでは毎日更新、キャッチアップしてからは、更新停滞の限度は「7日間」と設定させてください。
万が一、これを超えて更新が停滞した場合、限度を超えた日数を、上演日に延長加算させていただくことで賠償責任とさせてください。

かつて私は言葉というものに深く絶望し、憎んでいました。
言葉にすることで消えてしまうものがあるからです。
どんなに精密に組み立てられた言葉でも、またいかに美しく彩られた言葉でも、言葉とは宿命的に不完全であり、厳然たる真実そのものを語ることは絶対にできません。
その意味では、日記であろうと回想録であろうと、すべての言葉は嘘であると言えると思います。

しかし、私が言葉への絶望と憎しみから解放されたのは、故人の書き遺した言葉を読んだときに、言葉にすることで消えてしまうものがある一方で、言葉にしなければ消えてしまうものもあるのだ、と悟ったときでした。
言葉とは真実そのものを語ることはできませんが、目の前の真実とは別の、もう一つの真実を創造することができます。
そしてその言葉は読み返されるたびに時を超えて何度でも蘇ることができるのです。
私は「パ」日誌に綴られる言葉が、未来の者によってそのような形で読まれ、蘇り続けることを望んでいます。

手探りではじめた『「パ」日誌メント』ですが、この作品は3つの位相の「ライブ感」を有しており、それぞれに異なる観客が想定され得る、ということが分かってきました。
1つ目は、私が「パ」と発音してしまった瞬間、あるいは逆に「パ」と発音していないすべての瞬間に宿る「瞬間的ライブ感」。
2つ目は、「パ」日誌がブログとして公開され、現在進行形で更新されていくこと(あるいは今回貴殿からいただいたフィードバックのように、逆に更新されなかったこと)で生じる「社会的ライブ感」。
3つ目は、「パ」日誌の言葉が残され(遺され)、再び読み返されるたびに蘇る「超時的ライブ感」。
この3つの「ライブ感」が、できる限り完全な正三角形を保つバランス感覚が、作品の完成のために重要であると改めて認識いたしました。

最後に、このたび日本を襲った未曾有の危機の中、アーティストとして私が具体的にどのような行動をとるのか期待していてくださったとのこと、感謝いたします。
しかし私は積極的なことは何ひとつできませんでした。
海外ツアーをキャンセルしたり、いくつかのパフォーマンスの依頼を辞退したり…むしろ「何もできなかった」というよりも、敢えて「何もしなかった」と言った方がよいと思います。
それはこの圧倒的な渦の中、自分自身が何者によっても変えられないための、私なりの行動だったと言うこともできるでしょう。

世界と自分自身との間に生じる摩擦をしっかり体感しながら、ただ向き合い続けること。
そしてこの摩擦エネルギーから何かが生まれるかも知れない、という希望をしぶとく持ち続けること。
それが今の私にできる精一杯のことだと思っています。

本能が動きはじめ、自然に声が漏れてくるまでは、それで間違いないのだ、という漠然とした確信があります。

長文になりました。
改めて貴殿が私に向き合って下さったことに感謝いたしますとともに、私からの提案をご検討いただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

2011年4月17日
山川冬樹


陳謝状は以上。

秋田で震度5弱。岩手、福島、茨城で震度4。
そして今日は完封。三日連続。

ここまでの成績…
積算上演日数:535日(±0)
終演まで:426日(-1)
終演見込み日:2012年6月18日(±0)

Posted: 4月 19th, 2011
Categories: パ日誌
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18/04/2011/MON/百五日目

長野、千葉で震度3。福島で震度4。

Snow Contemporaryの石水さん経由で「パ」の買い主から陳謝状への返信が届く。

私の「パ」は最も理想的な人によって買われたのだと思う。4月9日の日誌に書いたような、フェアなTradeがなされている、と確信。これはアーティストとして本当に幸運なことなのだろう。

そしていずれ私の「パ」とTradeされた100万円はまた別に何かとtradeされる。
それがこの絶望的な世の中を生きる私の希望となっている。

二日連続の完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:535日(±0)
終演まで:427日(-1)
終演見込み日:2012年6月18日(±0)

Posted: 4月 18th, 2011
Categories: パ日誌
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17/04/2011/SUN/百四日目

新潟で震度5弱。福島で震度4。茨城、千葉、宮城で震度3。

「パ」の買い主に宛てた陳謝メールを書くのに苦悶。

あぁ、なぜ自分は「パ」日誌の更新を滞らせてしまったんだろう…。そもそもなぜこんな変なことを始めてしまったんだろう…。3月11日以降、震災のせいですべてが狂ってしまったのだ。こんなはずじゃなかった。仕事もないし、未来もないし、希望もないし、あるのは苦悶のための時間だけ。もうこの国にも、何もできない自分にも心底嫌気がさした。最悪だ…。
何もかもが嫌になり、自暴自棄になりかけた時、「パ」ートナーが一冊の詩集を渡してくれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・
「自分の感受性くらい」茨木のり子

ぱさぱさに乾いてゆく心を ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを 友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを 近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを 暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を 時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守ればかものよ
・・・・・・・・・・・・・・・・

「ばかものよ」…私が求めていたのはこの言葉だった。ハンマーで脳天を打たれたかのような衝撃を受け、いても立ってもいられなくなり家を飛び出す。「ばかものよ」を全身に巡らせようと、本能が運動を求めたのだろう。私は走った。詩の言葉を反芻しながら走った。走れば走るほど私の中で「ばかものよ」が勢い良く弾んだ。

そして駅前までたどり着き、ふと立ち止まって横断歩道の方を見ると、一人のおじさんがヤギに首輪をつけて散歩していた。まるで犬でも散歩するかのように。

「なんでヤギやねん!」と、思わず関西弁でつっこみを入れる私。

私の住んでいるところは、都心から電車で20分ほどの街で、決して農村があるようなのどかな田舎ではない。しかしそんなことはどうでも良かった。私はこのヤギとの出会いに何だかよく分からない縁を感じて興奮し、すぐに家に戻ると、「パ」の買い主への陳謝メールを書き上げた。そして送信。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:535日(±0)
終演まで:428日(-1)
終演見込み日:2012年6月18日(±0)

Posted: 4月 17th, 2011
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16/04/2011/SAT/百三日目

栃木で震度5強。福島で震度3。

朝、起き抜けに寝ぼけたまま「パンツがない…」と発言。
「パ」の買い主への陳謝のメールを書きはじめる。

地雷ワード、「パンツ」パ裂。

ここまでの成績…
積算上演日数:535日(+1)
終演まで:429日(±0)
終演見込み日:2012年6月18日(+1)

Posted: 4月 16th, 2011
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15/04/2011/FRI/百二日目

未明、新潟、福島で震度3。夜、岩手、福島で震度3。
この「パ」日誌が2月9日を最後に更新が滞っている件について、Snow Contemporaryの石水さん経由で、「パ」の買い主から厳しいクレームのメールをいただいた。
激しく落ち込み、死にたくなる。

4日連続の完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:534日(±0)
終演まで:429日(-1)
終演見込み日:2012年6月17日(±0)

Posted: 4月 15th, 2011
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14/04/2011/THU/百一日目

朝、茨城で震度4、福島、三陸で震度3。昼、福島で震度4。夜、福島で震度3が頻発。

東京芸大上野校地にて会議。主な議題は新学期の授業について。震災の影響で芸大取手校地の授業は、25日からの開始となっている。会議の中でガイガーカウンターを事務室に設置するとの案が八谷和彦さんから提案された。

3日連続の完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:534日(±0)
終演まで:430日(-1)
終演見込み日:2012年6月17日(±0)

Posted: 4月 14th, 2011
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13/04/2011/WED/百日目

早朝、岩手で震度4。朝、福島で震度5弱。

昼、「パ」ートナーから電話があり、仕事場で怪我をしたという。急遽車で職場まで迎えにいき、病院へ連れて行く。

度重なる余震、放射能、不安定な社会、見えない未来など、さまざまな不安に襲われ、気もそぞろになっていたことが事故につながったようだ。痛みに助手席で泣き叫ぶ「パ」ートナーをなだめながら運転し、病院を点々とするが、なかなかちゃんと診てくれるところが見つからない。だいぶ走ってようやく良い病院がみつかり、飛び込みで処置をしてもらう。幸い大事には至らず。

しかし私は私で「パ」ートナーが突然怪我をしたことで、すっかり気が動転し、午後予定されていた桂英史さんとの打ち合わせのことをすっかり忘れてしまっていた。桂さんからの電話で気がついた時には、もう約束の時間は過ぎていた。

「パ」ートナーを自宅へ送り届け、急いで東京芸大の横浜校地へ。出向いたのは桂英史さんとの打ち合わせが主な目的だったが、ちょうど桂さんと藤幡正樹さんによる「3.11震災後について語ろう。」というシンポジウムが催されていたので聴講する。シンポジウムの途中で私にも意見が求められ、マイクを渡された。当然、原「パ」ツの話題が出るわけだが、「原子力発電所」という言葉を使うことで「パ」裂を回避。

公の場で発言する時、なぜか地雷ワードの「パ」裂はほとんど起こらない。自分の言わんとすることを多くの人へ伝えようとする時、リアルタイムに言葉を選別しているからだろう。その推敲のプロセスで「パ」のつく言葉は自動的に候補から外れていく。我ながらなかなかのスキルである。

震災が起きてからというもの、ずっと引きこもって悶々としていたが、声による意見交換の場に立ち会えたことで、心が少し救われる。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:534日(±0)
終演まで:431日(-1)
終演見込み日:2012年6月17日(±0)

Posted: 4月 13th, 2011
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12/04/2011/TUE/九十九日目

未明から福島で震度3レベルの地震が頻発。朝、千葉、長野で震度5弱、福島で震度4。昼、福島で震度6弱。夕方、長野、福島で震度4。夜、福島で震度4。

朝8時ごろ揺れで目が覚める。震源が近かったせいだろう。今までの余震とは揺れ方がまったく違って感じられた。やはり地震の揺れには様々な質の違いがあるようだ。

地震のニュースを確認しようと、ニュースサイトを立ち上げる。すると福島第一の原「パ」ツ事故評価がチェルノブイリと同じ「レベル7」に引き上げられていた。愕然…。地震に揺られて目覚め、悪夢のようなニュースとともに迎えた朝。

福島の原「パ」ツ事故評価の「レベル7」への引き上げについて、被曝による死者が出ていないのに、チェルノブイリと同じ評価はおかしいとの意見も見られるが、ならば1999年の東海村臨界事故で被曝による2名の死者が出たことは、あまりに軽く評価され過ぎているのではないか。チェルノブイリ以前に死者が出た原「パ」ツ事故といえば、1961年、アメリカはアイダホ州の軍事試験炉でおきたSL-1事故がある。この時は運転員3名が死亡したが、遺体の露出していた部分(頭部、手など)の汚染度があまりにひどかったために切断して”放射線廃棄物”として処分されたという。被爆した遺体は、もはや遺体ではなく「廃棄物」として扱われるのか。惨い話だ。「非人道的」とはこういうことを言うのだな。

被曝することによって染色体がずたずたになるように、人と人のつながりが壊れていく。共同体が壊れていく。そして私の心もゆっくりと被曝していく。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:534日(±0)
終演まで:432日(-1)
終演見込み日:2012年6月17日(±0)

Posted: 4月 12th, 2011
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11/04/2011/MON/九十八日目

震災からちょうど一ヶ月。

午後2時46分、黙祷を捧げる。

「パ」ートナーと私たちが生きているこの世界の現状や、未来について語り合う。しかし今日の私は調子が悪かった。
「原発」、「パニック」、「パレスチナ」と立て続けに地雷ワード三連「パ」ツ…。

そして午後5時過ぎ、大きな揺れが起こった。震源は福島県浜通り、震度6弱、マグニチュード7。この影響で福島第一原「パ」ツ1~3号機の外部電源が途絶え、各炉心への注水用仮設ポンプが一時的に停止。

この一ヶ月で、余震が起こるたびに忌まわしいあの爆発の光景が脳内で蘇り、どんな時でも原「パ」ツの状況を危惧せずにはいられなくなってしまった。震災以降、こんな非日常的な状態が、私たちの日常になったのだ。

24時間、私は「パ」がつく言葉の「パ」裂を恐れながら、格納容器の「パ」裂をも恐れて生きている。
二重の意味で『「パ」日誌メント』。

ここまでの成績…
積算上演日数:534日(+3)
終演まで:433日(+2)
終演見込み日:2012年6月17日(+3)

Posted: 4月 11th, 2011
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10/04/2011/SUN/九十七日目

夜、福島で震度4。

高円寺で行われた、反原「パ」ツ、脱原「パ」ツデモに「パ」ートナーと参加。主催者発表によると、この日のデモには15,000人もの人が集まったという。

集合場所の高円寺中央公園に着くと、人、人、人…。公園はデモの参加者でごった返していた。目眩がするほどの人ごみの中で、嬉しいことに飴屋法水さん、コロスケさん(飴屋さんの「パ」ートナー)、くるみちゃん(お二人の娘さん・4歳)、しー(みんなの共通の友人)とばったり。

ほどなくして、サウンドカーが先導する形でデモがスタート。

”原「パ」ツいらね~!!!”

…と、シュプレヒコールが叫ばれる中、「パ」という音節を発音できない私は、当然周りと一緒に声をあげられるはずもない。2011年、これほどまで私たちの生活を左右することになった”原「パ」ツ”というキーワードが、私にとっては口に出すことを許されない地雷ワードであるという皮肉…。くるみちゃんに「はい」っと手渡された黄色い菜の花を手に、私は「パ」ートナーと並んで、デモの列の中をてくてくと大人しく歩いたのだった。

どれくらい歩いただろうか。デモも終盤に差し掛かり、大通りに出たところで、川の水量が増えて流れが急に強くなったかのように、デモの勢いが増しはじめた。サウンドカーがかける音楽も最高潮に盛り上がり、デモ隊から大きな歓声があがる。警察隊の数も俄然多くなり、警察車両からはメガホンによる警告が執拗に繰り返される。高円寺の街は混沌とした様相を呈し、デモを威圧してくる警官に食って掛かる者も出てきた。

逮捕者が出ないといいが…、と思ったその時である。隣を歩いていた「パ」ートナーが突然、路上に倒れ込んでしまったのだ。渦を巻く群衆の熱気に気を失ってしまったらしい。急いで「パ」ートナーを抱いてデモの列を離れ、しばらく道ばたで休ませる。

デモは途中で切り上げて一旦帰宅。統一地方選挙の投票へ。
結局、東京では原「パ」ツ推進派の石原慎太郎が再選。
私が投票した神奈川県知事候補者は当選。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:531日(±0)
終演まで:431日(-1)
終演見込み日:2012年6月14日(±0)

Posted: 4月 10th, 2011
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09/04/2011/SAT/九十六日目

朝、群馬、茨城で震度3。昼、茨城、宮城で震度3。夕方、宮城で震度5弱、茨城で震度4。

インディペンデント・キュレーターの窪田研二さんが今回の震災を受けて設立した「Japan Art Donation」。その「Japan Art Donation」主催のチャリティー展、「Art for Tommorrow」が、渋谷ワンダーサイトで始まった。作品の販売によって得られた収益は全額、被災地復興支援にあてられるという。

実はこの「Art for Tommorrow」へは、私にも参加の打診があった。
しかし私はそれに対して返事を返さず、事実上それを辞退した。

そもそもこの『「パ」日誌メント』のアイディアは窪田さんとの縁によって生まれたものだった。昨年10月に青山スパイラルで開催されたアートフェア「ULTRA003」に、窪田さんの主宰するSNOW Contemporaryが出展するにあたり、「代表作家として山川さんを出したいので販売可能な作品を作れるか?」という窪田さんからの”問い”に対する、私の”答え”がこの『「パ」日誌メント』だったのだ。

『「パ」日誌メント』は、個人コレクターに販売した私の初めての作品である。「出演料」という形で表現活動の対価を得ることが主な私は、それまで自分の作品を個人コレクターに販売しようと考えたことは一度もなかったし、どちらかというとそのことに対する漠然とした抵抗感すら持っていた。だからこそ敢えて ”この資本主義社会に生きながら、アーティストにとって個人コレクターに作品を売るとは一体どういうことなのか?” という問いへの解を、自らが体感的に求めるために、この『「パ」日誌メント』をはじめたのである。

投げかけられた問いへの答えが得られていないのに、「被災者のために」という大義を背負って、チャリティー展に参加することは私にはできない。窪田さんに返事を返さなかったのは…より正確に言うなら「返せなかった」のは…、チャリティー展の、作品販売によって得られた収益を被災地復興支援にあてる、というやり方に私が感じた違和感を、その時うまく言葉にできなかったからだろう。その違和感とは ”アーティストにとって、コレクターに作品を売るとは一体どういうことなのか?” という私の問いが、 ”被災地支援” という答えに直結してしまうという、”Trade” と “Donation” を巡る、ちぐはぐさへの違和感だったのだと、後になって分かってきた。

実際に値段がつけられ、アートマーケットで売買されたとしても、アート作品には決して数字で測り得ない価値がある。だからこそ私は、アート作品とTradeされる、お金そのものにも、額面では測り得ない価値を求めたいと思う。

私は、『「パ」日誌メント』の対価として支払われた代金100万円を、『「パ」日誌メント』を取り扱うギャラリーにあたる、窪田さん主宰のアート・プロダクション「SNOW Contemporary」を介さずに、買い主から直接私の口座に振り込まれるようにしてもらった。つまり『「パ」日誌メント』の取引において、中間マージンは発生していないのだ。その代わりに、私から「SNOW Contemporary」に支払うべき別のプロジェクトのマネージメント料に、『「パ」日誌メント』の取引にかかる中間マージン相当の金額を上乗せする形で差額を相殺したのだった。

私がわざわざこのようなことをしたのは、この『「パ」日誌メント』に「”100万円”出そう」と決めた買い主の決意を、そのままストレートに受け取りたいと思ったからだ。私は私の作品に対して支払われた100万円というお金には、買い主の私の作品や、私というアーティストに対する評価やリスペクトといった、肯定的な意思が込められていると信じたい。そして、そのような意思が込められた100万円というお金に、私は額面では測れない価値が存在すると考える。そのような額面価値を超えたお金と自分の作品がTradeされる時、私はアートマーケットにおいてはじめてフェアなTradeがなされたと納得することができる。そこで買い主によって”払われる”のは金銭だけではない。同時にリスペクトが、作品へそしてアーティストへ”払われている”のだ。私が私の作品を構成する労働や材料費といった数字で測れる価値以外の、芸術的価値といったものと本当の意味でTradeするに値すると思えるのは、何よりまずこのリスペクトなのである。

チャリティー展でコレクターが作品に対して払ったお金に、作品とアーティストに対するリスペクトが込められているとするならば、払われたお金が作品と直接Tradeされずに、被災地の復興支援にあてられるとき、作品とアーティストへ”払われた”コレクターのリスペクトは一体どこへ行くのだろう?

あるいはコレクターが作品を買う動機が、まず第一に被災地支援にあった場合、そこでの作品とは募金のオマケのような物になってしまわないだろうか?。払われたお金に作品とアーティストへのリスペクトが込められていないとするならば、そもそもアーティストが自分の作品をコレクターに売るとは、一体どういうことなのだろう?

いろいろ思うところはあるけれど、被災地支援のために一円でも多くのお金が集まることは良いことに違いない。チャリティー展のTradeとDonationを巡る特殊なお金と価値の流れを、一つに合流させるようなアイディアも考えられただろうし、そもそも私が求められたのは作品の提供ではなく上演形式のパフォーマンス参加であること(一対一のTradeとは異なる)、「Japan Art Donation」が集まった義援金を芸術に還元することで、芸術による被災地支援を謳っていることなどを考えても、今回の「Art for Tommorrow」が、ここまで私が述べてきたような側面だけでは捉えきれないのだ、とは思う。しかしそれでも私は一人のアーティストの立ち場で考えた時に、チャリティー展の構造に違和感を感じ、そこに乗れなかったのだった。

1月26日誌に書いたように、預金通帳に印刷された数字を見たときは、私の「パ」という音節に対して払われた100万円というお金に対してあまり実感が湧かなかったのだが、今回のことを通してだんだんと実感が湧いてきている。

今日は完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:531日(±0)
終演まで:432日(-1)
終演見込み日:2012年6月14日(±0)

Posted: 4月 9th, 2011
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08/04/2011/FRI/九十五日目

茨城、宮城、福島で震度3。

昼、何となく公園へ行くと、今年も例年と同じように桜が咲いていた。頑強な幹。爆発的に広がる枝ぶり。夥しい数の花びら。それなのに一ひら一ひらは何故こんなに優しい色なのかと思い、地面に散った花びらを拾い上げ、目を凝らしてみれば、「優しい」などという僕のヤワな感傷にFuck youと叫ぶように、花びらの付け根の激しいピンク色が網膜に突き刺さってきた。

夜、新宿ピットインへ大友良英さんと飴屋法水さんのデュオを観に出かける。

最近、顔の筋肉がおかしい。表情筋がひきつって頬が死人のそれのように硬直してしまっている。自分がどのように人とコミュニケーションをとっていたのか、よく分からなくなってしまった。

ライブは素晴らしかった。大友さんと飴屋さんの、瞬間瞬間で自ら放とうとする音を”信じる力”の強度に圧倒された。それなのにというべきか、だからこそというべきか、帰宅してから何故かとても気分が落ち込んでしまう。そんな私の様子を気にかける「パ」ートナーに言った。

私:「心配かけてごめんね」

地雷ワード、「心配」、パ裂。
11日間続いた連続完封記録がここで終わる。

ここまでの成績…
積算上演日数:531日(+1)
終演まで:433日(±0)
終演見込み日:2012年6月14日(+1)

Posted: 4月 8th, 2011
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07/04/2011/THU/九十四日目

宮城県沖を震源に、震度6強の余震。茨城で震度4の地震。

この影響で宮城県の女川原「パ」ツが冷却系統の電源3つのうち2つを損失。青森の東通原「パ」ツと、六ヶ所村再処理工場では、外部電源が使えなくなり、非常用発電機で冷却する事態に。

一時的に危機的な事態となり背筋が凍る。

そして11日連続の完封。連続完封記録更新中。

ここまでの成績…
積算上演日数:530日(±0)
終演まで:433日(-1)
終演見込み日:2012年6月13日(±0)

Posted: 4月 7th, 2011
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06/04/2011/WED/九十三日目

福島、茨城で震度4。宮城、茨城、新潟で震度3。

とうとう言論統制がはじまった。
総務省から、「東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への 適切な対応に関する要請」が出される。

暗澹たる気分。どんどんこの国が嫌いになっていく。

ほとんど家から出ず。10日連続の完封。連続完封記録さらに更新。

——————–

平成 23 年4月6日 総基消第145号

社団法人 電気通信事業者協会 御中
社団法人 テレコムサービス協会 御中
社団法人 日本インターネットプロバイダー協会 御中
社団法人 日本ケーブルテレビ連盟 御中


東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への 適切な対応に関する要請
総務省総合通信基盤局長

平素より、情報通信行政に対し、格別の御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、本日、「被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」(※)に おいて、「被災地等における安全・安心の確保対策」(別紙参照)が決定されました。東日本大震災後、地震等に関する不確かな情報等、国民の不安をいたずらにあおる 流言飛語が、電子掲示板への書き込み等により流布しており、被災地等における混乱 を助長することが懸念されます。つきましては、インターネット上の地震等に関連する情報であって法令や公序良俗 に反すると判断するものを自主的に削除することを含め、貴団体所属の電気通信事業 者等に、表現の自由にも配慮しつつ、「インターネット上の違法な情報への対応に関 するガイドライン」や約款に基づき、適切な対応をおとりいただくよう御周知いただ くとともに、貴団体においても必要な措置を講じてくださいますようお願い申し上げ ます。

※ 平成23年3月31日、関係省庁が緊密に連携し、被災地等における安全・安心の確保に 係る総合的な対策を検討・推進することを目的に設置(議長:内閣官房副長官補(内政)。

以上

被災地等における安全・安心の確保対策について(抜粋)

平成23年4月6日 被災地等における安全・安心の 確保対策ワーキングチーム決定

被災地等における安全・安心の確保対策(抜粋)
1 被災地等の治安回復・維持

(10) 流言飛語への対応
【内閣官房・警察庁・総務省・経済産業省】 地震や原子力発電所事故に関する不確かな情報等、国民の不安をいたずら にあおる流言飛語が、口伝えや電子メール、電子掲示板への書き込み等によ り流布されており、被災地等における混乱を助長していることから、このよ うな流言飛語に惑わされることのないよう、関係省庁が連携して、広く注意喚起のための措置を講じる。 特に、インターネット上の流言飛語については、関係省庁が連携し、これらの実態を把握した上で、インターネット利用者に対して注意喚起を行うと ともに、サイト管理者等に対して、法令や公序良俗に反する情報の自主的な 削除を含め、適切な対応をとることを要請し、正確な情報が利用者に提供さ れるよう努める。また、国、地方公共団体等は、あらゆるメディアを通じて信頼できる情報 発信に努める。なお、国、地方公共団体等が民間ソーシャルメディアを活用するに当たっ ては、認証の取得等の対策を講じることで、情報源としての信頼性を確保し、 インターネット上の流言飛語を抑止する。

被災地等における安全・安心の確保対策ワーキングチームの設置について(抜粋)
平成23 年3 月31 日 関係省庁申合せ

1 平成23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震の被災地及び福島第一及び第 二原子力発電所事故に係る避難指示対象地域等においては、混乱に乗じた犯罪 等の発生が懸念されるとともに、その他の地域においても、人の善意に乗じた 詐欺等の発生が懸念されることから、関係省庁が緊密に連携し、被災地等にお ける安全・安心の確保に係る総合的な対策を検討・推進するため、「被災地等 における安全・安心の確保対策ワーキングチーム」(以下「ワーキングチーム」 という。)を設置する。

ここまでの成績…
積算上演日数:530日(±0)
終演まで:434日(-1)
終演見込み日:2012年6月13日(±0)

Posted: 4月 6th, 2011
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05/04/2011/TUE/九十二日目

早朝、茨城で震度4。千葉で震度3。山形で震度3。岩手で震度3。宮城で震度3。

仕事がないので、ネットに没頭。

そしてまたアンドレイ・タルコスフキー『サクリファイス』のDVDを観る。

核戦争も、魔女と寝たのも幻だったのか…。ソファから起き上がったアレクサンドルが、取り戻された日常を実感しようとまず確認したのは「電気」だった。

1、ステレオの電源を切る。
2、電気スタンドの電源スイッチを入れたり切ったりしてみる。
3、電話をかけてみる。

9日連続の完封。連続完封記録更新。
仕事がない分、人と会わないので「パ」裂せずに済んでいる。

ここまでの成績…
積算上演日数:530日(±0)
終演まで:435日(-1)
終演見込み日:2012年6月13日(±0)

Posted: 4月 5th, 2011
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04/04/2011/MON/九十一日目

茨城で震度3。

飴屋法水さんファミリーと遊ぶ。まずは飴屋さん、コロスケさん、くるみちゃんと待ち合わせ。ドーナツ食べて新宿でかくれんぼ。途中から「パ」ートナー、デバ、しーも合流して飴屋さんちに移動して皆で戯れる。夜は新大久保の韓国料理屋でごはん。
楽しかった。

8日連続の完封。連続完封記録更新。

ここまでの成績…
積算上演日数:530日(±0)
終演まで:436日(-1)
終演見込み日:2012年6月13日(±0)

Posted: 4月 4th, 2011
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03/04/2011/SUN/九十日目

朝、秋田で震度3。昼、茨城、福島で震度3。夕方、福島で震度4。夜、また福島で震度4。

実家で夕食。
キッチンから食卓への料理の運び方をめぐって、母と激しい親子喧嘩。
私も母も疲れているようだ。

7日連続の完封。
2月25日~3月3日の期間に達成した連続完封記録に並んだ。

福島原発で不明の20代東電社員2人、遺体で発見(産経ニュース)
東京電力は3日、福島第1原子力発電所4号機タービン建屋で行方不明になっていた同社社員2人が遺体で見つかったと発表した。
東電によると、死亡が確認されたのは、福島第1原発第1運転管理部の小久保和彦さん(24)と寺島祥希さん(21)。
2人は3月30日午後、4号機タービン建屋地下1階で発見された。現場は放射性物質で汚染された水がたまっており、1人は水面に浮いた状態で見つかった。翌31日に運び出して除染作業を行い、4月2日に死亡確認と家族との対面が行われたという。
2人は震災当日の3月11日、4号機タービン建屋地下1階の調査に行ったまま行方不明になっていたという。死因は多発性外傷による出血性ショックで、死亡推定時刻は3月11日午後4時ごろ。津波に巻き込まれたとみられる。
東電の勝俣恒久会長は「地震・津波に襲われながらも発電所の安全を守ろうとした若い社員を失い痛恨の極み。深くご冥福をお祈りする。二度と悲劇を繰り返さないことを誓い、福島第1原発の事故収束に向け全身全霊をかたむけていく」とコメントした。

ここまでの成績…
積算上演日数:530日(±0)
終演まで:437日(-1)
終演見込み日:2012年6月13日(±0)

Posted: 4月 3rd, 2011
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02/04/2011/SAT/八十九日目

未明、宮城で震度4。昼、宮城で震度4、秋田、岩手、茨城で震度3。夕方、茨城で震度5弱。夜、福島で震度4。

ふと武満徹の言葉を思い出す。

「それは戦争の末期で私は十四、五歳でした。私は軍隊とともに山の中にいました。その当時西洋音楽を聴くことは禁止されていて(当局の馬鹿げた政策ですが)軍歌とドイツのマーチだけが許されていました。ある日のこと、とても若く知的な見習士官が軍に配属されました。大学の学業半ばに徴兵された彼は、戦争を憎んでいました。その彼の行なったことが私の人生を変えました。彼は西洋音楽のレコードを一枚持ってきていたのです。それは禁止されていたシャンソンのレコードでした。私たちはひそかに集まり、隠れて聴きました。レコードには二〇年代か三〇年代の歌が一曲入っていました。彼はレコードをかけ、私たちは耳を傾けました。そんなに美しいものが存在するとは想像したことさえなかったので、私はびっくりしてしまいました。『パルレ・モワ・ダムール』、何とすばらしい音楽でしょう!あの経験は死ぬまで忘れられないでしょう。その時です、いつか戦争が終わったら作曲家になろうと決めたのは。」

久しぶりに武満徹の音が聞きたくなってCDをプレーヤーにかけた。

『弦楽のためのレクイエム(1957)』

3月28日の日誌に書いた「被曝した遺体」が収容されたとのこと。しかし原「パ」ツ20キロ圏内には、数百~1000体もの「被曝した遺体」が残されていると推定されるという。

夜、私が電話の着信に気づかなかったことが原因で、「パ」ートナーと喧嘩。

6日連続の完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:530日(±0)
終演まで:438日(-1)
終演見込み日:2012年6月13日(±0)

Posted: 4月 2nd, 2011
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01/04/2011/FRI/九十一日目

全国民が平和と秩序と規律の回復に努めねばならぬ。我々が恐れる唯一の危険な敵は、パニックが起こる事である。パニックは伝染しやすく、常識を以ってしては、測れぬ様相を示す事がある。秩序と、そして組織である。国民諸君、このほかに道はない。秩序だ。秩序を守って、混乱を防ぐのだ。国民諸君に心からお願いする。何が起ころうとも勇気を以って、理性に従って行動しなければならぬ。
ミサイル基地のどれかが、おそらくは、我々に悲劇的終末をもたらす。通信はもはや保証されていない。国民諸君、この際、何が重要であるかは、すでに話した。動いてはならぬ。全欧州に安全な土地は、我々がいる所のほか、他にどこにもない。そのため、我々全員が同じ状況のもとにおかれている。すべての地区に軍の特殊部隊が配置され、その指揮をうける。それ故…

ザーという音と同時に電波が混線し、テレビの映像が途絶える。

「何かしないでいいの?」いすから立ち上がって言うアデライデ。

「私はこの時を一生待っていた。この時が来るのを待っていた」と独り言を言うアレクサンドル。

部屋を沈黙が襲う。オットーがアデライデにさわろうとする。

「さわらないで!」と叫び、「私たち何かできないの?」と泣き崩れるアデライデ。

「ママ落ち着いて」とマルタ。

アデライデを落ち着かせようとするヴィクトル。

「私が悪いのよ。罰を受けているのよ」と言いながら、理性を失っていくアデライデ。

アンドレイ・タルコフスキー、『サクリファイス』より。

秋田で震度5強。岩手、宮城で震度4。

5日連続の完封。

ここまでの成績…
積算上演日数:530日(±0)
終演まで:439日(-1)
終演見込み日:2012年6月13日(±0)

Posted: 4月 1st, 2011
Categories: パ日誌
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