11/02/2011/FRI/四十二日目

『金閣寺』13公演目。終演後、アフタートーク。出席者は、宮本亜門さん(演出)、小野寺修二さん(振付)、伊藤ちひろさん(台本)、そして私の四名。私はラストシーンで体に金のペイントを施して出ているので、終演後、楽屋のシャワーで金を落とし、少し遅れてトークショーに参加する、という段取りになっていた。

カーテンコールを終え、楽屋に戻りシャワーを浴びていると、楽屋のスピーカーからトークショーの模様が聞こえてきた。始まったようである。

劇場というのは、各出演者が自分の出番を確認するため、舞台表の状況が映像と音声によって各楽屋にリアルタイムにモニターされる仕組みになっている。スイッチを切らない限り、トイレで用を足しているときや、シャワーを浴びているときでさえ、裏に舞台表の状況がダダ漏れで流れてくる。しかし自分がこれから参加するトークショーのやりとりを聞きながら、自分の裸をごしごしと洗うというのは、何とも奇妙なものだった。皆を待たせている。早く行かなければ…私は焦った。急いでシャワーからあがり、体もろくに拭かず、裸足のまま靴と靴下を抱えて楽屋を飛び出して、首からバスタオルを掛けた半裸の格好で、私はトークショーの行われている舞台に駆けつけた。

ふと皆の顔を見ると、トークの出席者も観客も目が点だ。私が着替え途中で壇上に上がったことに驚いているようである。人の目というのは不思議なものだ。たったさっきまで私は半裸で舞台にいたではないか。その私が再び半裸で舞台に出て来ただけだというのに…。そう思いながら自分に用意された席に腰掛けて、おもむろに靴下を履きながらトークに合流しようとしたのだが、それまでの話の骨は私のせいですっかり折れてしまったようだった。すみません。

トーク終了後はスタジオへ移動し、亜門さん立ち会いのもと、二幕のラストシーンで使う私の目のアップ映像の撮り直し。撮影は昔から友人である映像作家、掛川康典さん。

以前撮影したときは、軽くアイシャドウを入れただけで撮ったのだが、今回は目の周りを真っ黒に塗りつぶした状態で撮影したいという。つまり舞台上にプロジェクターで映像が映し出されたとき、私の目だけが浮かび上がるような風に撮影したいということだ。

撮影は和やかに進んだ。両目の目の周りを丸く黒で塗りつぶされた私の顔を見て笑うスタッフたち。最終的には目が画面いっぱいになるように撮影するので問題ないのだが、引きで見ると相当滑稽な顔になっているようである。ふと、このとき私の中で「パ」災報知器が働いた。ここで私が気をつけなければならないのはあの動物だ。そう、「パンダ」である。私の脳内で「バンダ」警報発令される。

掛川さん:「ははは、パンダみたいだね(笑)」

私:「…」

私の中で「パンダ」が最大の敵となっていることなど知る由もない掛川さんは、さらに続けた。

掛川さん:「あとなんか、こういうメイクするバンドいたよね(笑)」

こんな時、音楽好きはちょっとひねりの効いたレスポンスを返したいものである。ここで「キッス」や「マリリン・マンソン」を挙げるのは野暮だろう。しかしマニアック過ぎて伝わらなくては本末転倒。同世代ならこそばゆく感じられるであろう、絶妙なラインを狙うのがマナーというものである。

私:「うーん…MISFITS…!」

掛川さん:「ぎゃははは(笑)」

私:「うーん…アリス・クーパー!」

掛川さん:「あぁ、いたねー、なつかしー(笑)」

地雷ワード「アリス・クーパー」パ裂。

ここまでの成績…
積算上演日数:429日(前日比 +1日)
終演まで:387日(前日比 ±0日)
終演見込み日:2012年3月4日(前日比 +1日)

そしてこれに加えて、4月19日に発表した契約者様への陳謝状で約束した通り、2/10〜4/19更新延滞賠償分の「68日」を加算すると…

積算上演日数:429日+68日=497日
終演まで:387日+68日=455日
終演見込み日:2012年5月11日

Posted: 2月 11th, 2011
Categories: パ日誌
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