15/03/2011/TUE/七十四日目

未明、茨城で震度3、福島で震度3。早朝、東京で震度3、新潟で震度3、宮城で震度3、福島で震度3茨城で震度3。朝、新潟で震度3、秋田で震度3、福島で震度3、茨城で震度3。昼、岐阜で震度3。夕方、茨城で震度3。夜、静岡で震度6強、福島で震度6強、山梨で震度4、茨城で震度3、千葉で震度3。

起床。昨晩はあまり眠れず。

一階の食堂へ降りると、母が朝食をつくってくれていた。窓際に置かれたテレビでは、今日も慌ただしく震災と原発についての報道が繰り返されている。

アナウンサーが言った。

”東京電力福島第1原発爆発事故を受け、菅直人首相は午前11時にも国民に向けたメッセージを出すとのことです。えー、繰り返します、東京電力福島第1原発爆発事故を受け、菅直人首相は午前11時にも国民に向けたメッセージを出すとのことです。”

私はこの「会見」が、わざわざ「国民に向けたメッセージ」という言い方で報じられていることに戦慄した。おそらく昨日の爆発によって拡散した放射能は、風にのってもう首都圏に到達しているはずである。しかし自分が吸っている空気の放射線量を知る術がない。そんな状況の中で、昨日の原「パ」ツ爆発を受けて首相が「国民に向けたメッセージ」を出すという。真っ先に1945年8月14日夜と8月15日朝に、「十五日正午に天皇自らの放送がある」と報じたあの予告放送のことが思い出された。玉音放送にしろ、911の際のブッシュのテレビ演説にしろ、世界大恐慌の際のルーズベルトのラジオ演説にしろ、国家の最高責任者が国民に直接メッセージを伝えようとするとき、それはいつも国民がこれから歴史的な受難を引き受けなければならないという宣告だった。このニュースはその宣告の予告なのだ。

私は時計に目をやった。時間は午前10時40分を少し過ぎたところである。よし、まだ間に合う。私は朝食を中断し、母に水を詰められるあらゆる容器をすべて水道水で満たすようよう指示し、自分もついて行くという「パ」ートナーを足手まといになるからと振り切って、寝巻きのまま家を飛び出した。近所のコンビニエンスストアを何軒も走って回り、ありったけのマスク、軍手、ガムテープ、飲料水を買い漁る。きっとこれは「買い占め」という非難されるべき行為なのかも知れない。しかし私にも守らなければならないものがあるのだ。両手いっぱいに袋を抱え、実家に帰ると、ちょうど菅首相の「国民に向けたメッセージ」がはじまるところだった。

”国民の皆様に、福島原発について御報告をいたしたいと思います。是非、冷静にお聞きをいただきたいと思います。”

「メッセージ」はこんな不穏な調子で始められた。以下、会見より引用。

”福島原発については、これまでも説明をしてきましたように、地震、津波により原子炉が停止をし、本来なら非常用として冷却装置を動かすはずのディーゼルエンジンがすべて稼働しない状態になっております。この間、あらゆる手だてを使って原子炉の冷却に努めてまいりました。しかし、1号機、3号機の水素の発生による水素爆発に続き、4号機においても火災が発生し、周囲に漏洩している放射能、この濃度がかなり高くなっております。今後、さらなる放射性物質の漏洩の危険が高まっております。

ついては、改めて福島第一原子力発電所から20kmの範囲は、既に大半の方は避難済みでありますけれども、この範囲に住んでおられる皆さんには全員、その範囲の外に避難をいただくことが必要だと考えております。

また、20km以上30kmの範囲の皆さんには、今後の原子炉の状況を勘案しますと、外出をしないで、自宅や事務所など屋内に待機するようにしていただきたい。そして、福島第二原子力発電所については、既に10km圏内の避難はほぼ終わっておりますけれども、すべての皆さんがこの範囲から避難を完全にされることをお願い申し上げます。

現在、これ以上の爆発や、あるいは放射性物質の漏洩が出ないように現在全力を尽くしております。特に東電始め関係者の皆さんには、原子炉への注水といったことについて、危険を顧みず、今も全力を挙げて取り組んでいただいております。そういった意味で、何とかこれ以上の漏洩の拡大を防ぐことができるように全力を挙げて取り組んでまいりますので、国民の皆様には、大変御心配はおかけいたしますけれども、冷静に行動をしていただくよう心からお願いを申し上げます。

以上、国民の皆さんへの私からのお願いとさせていただきます。(引用終わり)”

その後、枝野官房長官の会見が続く。それによると、午前10時22分に、第1原発3号機付近で毎時400ミリシーベルトの放射線量を観測。これは1時間で一般人の年間被ばく線量限度の400倍になるとのこと。これについて、”身体に影響を及ぼす可能性の数値であることは間違いない”、”放射能濃度がかなり高くなっている。今後、放射能の漏えいの危険が高くなっている” とのこと。

今のところ、首都圏に関してはまだ深刻な放射線量ではないとのことだが、原「パ」ツ事故には隠蔽がつきものだ。果たして政府や東電は信じられるのだろうか…。

そして夜、静岡県東部を震源に震度6強の地震。この地震で2名が重傷、48名が軽症。521棟の建物が一部損壊。21,700軒が停電。

twitterでは八谷和彦さんが書いた「うんち・おならで例える原発解説」が話題になっていた。今回の原「パ」ツ事故が子供でも理解できるよう、ユーモラスな例えで解説された名文である。私はこれを不安で押しつぶさそうになっている母と「パ」ートナーを少しでも落ち着かせようと、声に出して二人に読み聞かせたのだった。深刻な現状を的確に解説しながらも、おもしろ可笑しく表現されたその文章に、それまで浮かない顔をしていた二人の顔が「パ」っと明るくなって笑いがおこる。しかし、文中には当然「原発」という言葉が頻発する。私は文章を目で追いながら、この文字をキャッチする度に、頭の中で「原子力発電所」という言葉にリアルタイム変換して声に出していたのだが、一カ所、ミスってそのまま「原発」と読んでしまったのだった。

地雷ワード、「原発」、パ裂。

ここまでの成績…
積算上演日数:523日(+1)
終演まで:449日(±0)
終演見込み日:2012年6月6日(+1)

Posted: 3月 15th, 2011
Categories: パ日誌
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