23/03/2012/FRI/四百四十八日目

今日はアトリエで少し作業をした後、恵比寿で催された多摩美の謝恩会に出席。二次会を途中で抜けて帰宅し、デスクワークをしていると、映画を観に出かけていた「パ」ートナーから電話がかかってきました。電話越しの「パ」ートナーの声は何やらハイテンションで、神経が高ぶっているようでした。それに対する僕の態度がそっけなく感じられたのでしょう(デスクワークの途中だったので、僕もうわの空で彼女の話を聞いてしまっていたのだと思います)。彼女は僕の態度に怒りだし、それを受けて僕もつい感情的になってしまいました。

その時はお互い怒って電話を切ってしまったのですが、後からちょっと悪かったなという気持ちが出てきたのが半分、ご機嫌とりの気持ち半分から、小雨が降る中、「パ」ートナーが到着する時間を狙って駅の改札口まで迎えに行くことにしました。

終電間際。電車が到着し、仕事帰りのサラリーマンとOLたちが改札口から流れ出る人ごみの中に「パ」ートナーの顔が見えたとき、僕は白い紙に赤いペンで大きなハートを描いて、彼女の方へ高く掲げました。すると最初はこわばっていた「パ」ートナーの顔が、それを見つけてみるみる笑顔に変わるのが分かりました。作戦成功です。皆がじろじろ見るので恥ずかしかったのですが、僕たちの場合、本気の喧嘩に発展すると洒落にならないほど激しいので、この程度の恥で危機が回避されるならお安いものです。

すっかり機嫌を直した「パ」ートナーは、僕に会うなりこう言いました。

「ちょっと公園付き合ってくれない?爆発しそうなの。踊りたい。」

あなたなら想像がつくでしょう。彼女には内側で風船が膨らんではち切れそうになるように、エネルギーを持て余しはじめることがしばしばあるのです。

僕らは一旦帰宅し、着替えた後、小雨の降る中、深夜の公園へと出かけました。公園に着くなり、「パ」ートナーは傘を投げ捨てて、iPhoneでお気に入りの曲をかけたかと思うと、持参した屋久杉製のしゃもじを二本、両手に持って踊りはじめました。闇の中を雨に打たれ、泥にまみれ、地面に身体を打ち付けながら、あまりに激しく踊るので、少し心配になりましたが、怪我をしたり警察沙汰にならない限りは、自由にさせてやろうと思いました。

見守る観客は僕一人。端から見れば狂っているようにしか見えないはずです。しかし僕は彼女の踊りの中に表現していなければ生きられないという、その性を、そのエネルギーの根本を、見た気がしました。彼女はすばらしい芸術家です。

しばらくして、「パ」ートナーは「ゴン!」という音とともに水たまりに倒れ込みました。頭を地面に打ったようでした。僕は駆け寄って彼女を抱きかかえて言いました。

「すごく良かった。感動したよ。さぁ、帰ろう」

濡れた髪がまとわりついた彼女の顔は、げっそりとしながらも、恍惚とした笑みを浮かべていました。すぐ自宅へ帰って、震える彼女を風呂に入れ、擦りむいた怪我の泥を洗ってやり、就寝。

彼女と生きるのは簡単ではありませんが、本当に飽きません。僕らはいつもエネルギーのぶつかり合い、せめぎ合いに生きています。そしてそのテンションから未来が生まれるのだと強く信じています。その未来の実態をあなたは良く知っているでしょう。

夜、福島県沖を震源に震度3。今日は完封。

Posted: 3月 23rd, 2012
Categories: パ日誌
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