27/01/2011/THU:二十七日目

昼:豚の生姜焼き、白米、福神漬け
夜:ココナッツカレー、豆乳ハンバーグ、サーモンとルッコラのサラダ、野菜のミネストローネ

ゲネプロを前日に控え、現場は慌ただしくなっている。楽屋に入ると演出助手の方が訪れてきて、一つ相談があると言う。舞台では高所で不安定な姿勢のままホーメイを歌うシーンがあるのだが、昨日スタッフが実際に登って確認してみたところ、その場所で歌うのは危ないと判断したとのことで、そのシーンでのホーメイは事前に録音したものを流したいというのだ。

それはつまり、「口パク」でやってくれということである。私はライブに生きてきた人間だ。だから舞台では、その瞬間、その場で声が発せられることに強いこだわりがある。これは私自身の目には近すぎて見えないほど、自分にとって当たり前のこだわりとなっていて、だからこそ「口パク」という提案をさらりとされたことは大きなショックだった。私の声が録音でよいのなら、生身の私が舞台に立つ必要などない。劇場に流される自分の声に合わせて、私が自分を演じてみせるとき、その不条理な一致は私の自己同一性を崩壊させるだろう。

後から考えれば「口パク」というのは私の身の安全を考慮して下さっての提案なのだが、その時、私は内心、激昂していた。不自然に押し殺した低い声で言う。

「あの…、やっぱり僕は役者じゃなくて、ライブミュージシャンなのでぇ、生で声を出してナンボなんですよ…。そうでなければ僕のこの舞台での存在意義はないと思うんですよね。分かります?だからあのシーンは絶対に生でやります。」

「パ」への予防線がおろそかになるのはこんな風に感情的になってしまった時である。
地雷ワード、”やっぱり”、パ裂。

私の希望は聞き入れられ、問題のシーンは生でいくことになった。舞台へまわり、実際にその場所へ登ってみる…。さっきは強く出てしまったものの、確かに上は足場も狭く不安定である。その状態で腹に力を入れて歌うのは容易ではないことがよく分かった。

「やっぱ、こわいっすね…」

地雷ワード、”やっぱ”、パ裂。

尚かつ私の乗っかっている装置には稼動するしかけがあるので、その動きによってかかる体への力を想定しながら…

「僕の心配しているのは、こう動いた時、体がこうなることなんですよ…」

地雷ワード、”心配”、パ裂。

本番直前の現場では、体も、神経も、言葉も使う。すると自然に「パ」災報知器の方もおろそかになり、今日は3回も地雷ワードを踏んでしまった。

というわけで…
積算公演日数:418日(前日比 +3日)
終演まで:391日(前日比 +2日)
終演見込み日:2012年2月22日(前日比 +3日)

Posted: 1月 27th, 2011
Categories: パ日誌
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