27/09/2011/TUE/二百二十六日目

アムステルダム四日目。今日は敢えてトラムを使わずに、街をひたすら歩く。

宿から1時間半ほど歩くとダム広場へ着いた。その名の通り、ここにはかつてアムステル川をせき止めるダムがあった場所で、アムステルダムの市名はここに由来するらしい。広場の塔の周辺は、60年代から70年代にかけてヒッピーたちの溜まり場となったそうで、ごろごろと寝そべる彼らの姿があしかに見えたことから「あしかの丘」とも呼ばれているとか。僕が訪れたときは、たまたまブラジル移民たちがビリンバウとパンディロを打ち鳴らしながら、鮮やかな格闘の舞に踊り興じていた。まさかオランダでカポエイラを見られるとは。

しばし跳躍する黒い肉体に見とれた後は、今回のアムステルダム訪問で一番行きたかった『アンネ・フランクの家』へ。『アンネの日記』で有名なアンネ・フランクが、第二次大戦中ナチスから息を潜め、身を隠していた家がそのままの形で残された場所である。それにしてもここは強烈だった。クリスチャン・ボルタンスキーの作品も、この究極的にサイトスペシフィックなインスタレーションの前では霞んでしまうだろう。決して霊感が強いわけでもない僕さえも、この淀んだ空気に棲みついた何者かの気配に目眩がして、気を確かにもっていないと意識を失いそうになるほどだった。

アンネ・フランクの家を後にし、「Patterns+Pleasure」フェスティバルの二日目を観るためFrascati劇場へ。グラスを片手にロビーでふらふらしていると、昨日の「パ」フォーマンスを観てくれていたのだろう、いろんな人が声をかけてくれて立ち話。

その中に東京に住んでいたことがあるという女性がいた。思えばどこかで会ったことがある顔である。東京のライブハウスかどこかだろうか。

僕:「Oh,Yes I remember you! so where are you from?」

女性:「I am from Finland」

僕:「Where in Finland?」

彼女は僕の質問に対し、聞いた事もない地名を答えた。そもそも会話を弾ませるために聞いてみたものの、フィンランドのどこ?と返したところで、フィンランドの地名なんて僕はヘルシンキと、地球で唯一、放射性廃棄物の最終処分場があるオルキルオト島ぐらいしか知らないのだ。ちょっとためらいながら、聞き返す。

僕:「er… Which part?」

女性:「Southern part.」

地雷ワード「part」、パ裂。

すると昨日出演していたアメリカ人のArthur&PunisherのArthurが通りかかり、会話に加わってきた。話題は日米のアヴァンギャルドな音楽シーンに及ぶ。Arthurは最近アメリカで観た「Maruosa」という日本のアーティストがいかに素晴らしかったかを力説してくれた。多くの所謂”一般的”な日本人は知らないが、日本のメジャーなアーティストのほとんどが国際的な評価に値しない一方、アンダーグラウンドな世界では国際的にリスペクトされ、活躍している日本人アーティストはとても多いのだ。Maruosaさんは以前同じイベントに出演したこともあるし、ダンサーの東野祥子ちゃんのダンスクラスで一緒に身体を延ばしたこともあるので良く知っている。Arthurは続けた。

Arthur:「そのときもう一人日本人が出てたんだけど、そいつはイマイチだったな。なんかバイクのヘルメットみたな黒いマスクをかぶって演奏するやつ」

黒いマスクをかぶって演奏?…。誰だろう。僕はまったく想像がつかなかった。そんなアーティスト日本にいたかなぁ。彼に聞き返す。

僕:「Is he Japanese?」

地雷ワード「Japanese」、パ裂。

「Patterns+Pleasure」フェスティバルの二日目の出演者は、NINA BOAS(オランダ)、JESSICA RYLAN(アメリカ)、EDISON(アメリカ)、ALEX NOWITZ(ドイツ)。昨日自分の出番が終わったので、リラックスしながら堪能する。

NINA BOASはジェーン・バーキンのようなフレンチポップスを歌いながら、デジタルな水森亜土といった赴きでアニメーションを描く「パ」フォーマンス。JESSICA RYLANはメガネをかけたGEEK面ながら、ボディコンシャスなワンピースにパンプス姿で、神経質そうに自作のシンセサイザーを弄り、何故か途中で泣き出してしまうなど、情緒不安定な所が良かった。EDISONは自作のサンプラーのパッドを叩いて、ブレイクビーツを繰り出しながらラップ。自作のサンプラーは良くできていたが、「パ」フォーマンス自体はイマイチ。ALEX NOWITZはwiiリモコンを使ってオケを制御しながら、クラシック声楽とパントマイムの素養を活かし、洗練された「パ」フォーマンスをみせてくれた。

終演後はタクシーで宿へ。

ここまでの成績…。
積算上演日数:854(+2)
終演まで:584(+1)
終演見込み日:2013年5月2日(+2)

Posted: 9月 27th, 2011
Categories: パ日誌
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