02/03/2012/FRI/四百二十七日目

七生特別支援学校で特別授業。対象は高校2年生26人。

七生特別支援学校の子たちは、論理的思考や言語の扱いは苦手だが、開かれた剥き出しの心を持っており、その感覚は恐ろしく鋭敏であるというのが、先日下見に訪れたときの印象。言葉で伝えられることが少ない分、いかに身体と身体、感覚と感覚で、彼(女)らと共鳴を生み出せるかが勝負所だった。

生徒の中に一人耳の聞こえない子がいた。音は僕の表現では欠かす事のできない要素なので、どうしたものかと考えあぐねた結果、その子のために教室の床に振動スピーカーを設置、音を触覚的に感じられる仕掛けをつくった。その子に胸に電子聴診器をあててもらうと、その心臓の鼓動は地震のような振動となって床を揺るがした。どよめく教室…。さらにその鼓動を白熱球の光と同期させると、その子の命は光になって空間を明滅させた。耳の聴こえないその子は、足の裏と網膜で自分の命を感じながら、心臓のリズムに合わせて、何かを突き破るような勢いで「ハッ!ハッ!」と何度も息を吐いていた。なぜかは分からないが、そうしなくてはならない理由があったのだろう。僕はとっさにギターを手にとって、鼓動に合わせて、ボディを叩き、弦を揺らし、ここぞという瞬間を狙ってシンバルを蹴り上げた。もちろんその子にその音は聴こえない。しかしお互いの間に、コラボレーターとして、特別な瞬間を創造しているという確信が生まれた。

骨伝導マイクの音も床に響かせてみた。頭蓋骨を叩くとその振動が床に伝わる。その子に叩いてごらんと頭を差し出すと、ありったけの力を込めてゲンコツで殴られた。顔を歪め、「痛ってぇー!」と思わず声を上げる僕。大笑いする生徒たち。隣に座っていた子が見かねて、その子の手をとり、コツコツと優しく僕の頭を叩くのを手伝ってやる。耳のきこえないその子にとって、小さな振動が電気で何倍にも増幅されるということは、まったく新しい体験だったのだ。自分の体に伝わってくる、その大きな振動に見合う力で叩かなければ、と思ったに違いない。

今回の七生特別支援学校への訪問で、「アーティスト一日学校訪問」はすべて終了。

震度3以上の地震は観測されず。今日は完封。

Posted: 3月 2nd, 2012
Categories: パ日誌
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