17/07/2011/SUN/百五十四日目

昼、東向島で「アトミックサイト」展の展示準備。

今回出展するメインの作品は、エレキギターとアナログガイガーカウンターを合体させてつくった『原子ギター』である。これは電気を象徴する楽器であるエレキギターが、東京電力の作る電気によって活力を与えられながら、その東京電力のまき散らした放射性物質を検出すると自ら弦を震動させ、見えない放射能を音楽として顕在化させるというインスタレーションだ。放射線量が高ければ早いテンポの演奏になり、逆に低ければ演奏のテンポは遅くなる。ギャラリーのある東向島の空気を放射線源とした場合も『原子ギター』は反応し、ゆっくりとした演奏になるのだが、今回はより激しい演奏を求め、放射線源として東京芸大取手キャンパスの側溝から採取した土を使うことにした。

茨城県取手市や守谷市、千葉県柏市、松戸市といった首都圏北東部エリアはホットスポットとなっていて、僕の勤務地である東京芸大取手キャンパスの側溝から採取した土は2μ~3μSv/h。『原子ギター』を鳴らすに十分な放射性物質を含んでいる。展示の際は、汚染土をステンレス製の皿に乗せて上からラップをかけ、そこへ『原子ギター』のガイガーミューラー管をかざす形でセットするのだが、ジップロックに密閉して保管しておいた汚染土をステンレス皿に移す作業は、埃とともに放射性物質が舞うのでやはり気を使う。

僕はマスクをして密閉された汚染土とステンレス皿をもってギャラリーに面した通りに出た。しゃがんで恐る恐るジップロックを開けてみると、乾いた土埃が舞うのが微かに見えた。それをマスク越しに吸わないように、少しずつ後ずさりしながら、乾いた土をステンレス皿の上へさらさらと流し込む。ふと気づくと通りがかりの女子高生が僕の一連の作業の様子を数メートル先から伺っていた。その表情から明らかに僕に怯えているのが分かった。怖くないよ、と軽く微笑みかけてみたものの、マスクをしているので伝わる由もない。すると突然、女子高生は走り出し、一目散に逃げていった。

無理もないだろう。放射能マークを大きく配したポスターが掲げられた建物の前で、マスクをした男が怪しげな土を袋から金属の皿に移している光景は異様に見えるはずである。しかしそれがどんなに異様に見えたとしても、あの原「パ」ツ事故以降、物々しい放射能マークも、マスクをすることも、放射能に汚染された土も、僕らの生活の一部と化したことは否定しようのない事実である。

そして深夜は、CLUB ASIAで開催されたフェス「KAIKOO」にTHE LEFTY+伊東篤宏氏+僕のカルテットで出演。この日のライブは後日ライブ盤としてリリースされる。

朝、福島で震度3。今日は完封。

ここまでの成績:
積算上演日数:643(±0)
終演まで:445(-1)
終演見込み日:2012年10月4日(±0)

しかしパ日誌の更新が滞ったため(10/1~11/25)、罰則として上演日数を56日間延長。したがって現時点での成績は下記の通り。
積算上演日数:699
終演まで:501
終演見込み日:2012年11月29日

Posted: 7月 17th, 2011
Categories: パ日誌
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